アートコレクターズ9月号(生活の友社)掲載のお知らせ


8月25日発売のアートコレクターズ9月号(生活の友社)p.66に特別連載”版画工房アーティー制作の現場からvol.5”が掲載されました。
こちらの記事は、版画工房アーティーが専門に制作する”ジクレー版画(デジタル版画)”を切り口に、様々なアーティストや画廊へインタビューする連載記事となっております。

第4回は画家の玉村豊男先生にインタビューをさせて頂きました。
テーマは「ライフアートと版画」についてです。

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記事全文は下記よりお読みいただけます。


アーティー 本日はエッセイスト・画家・農園主と様々な顔を持つ玉村豊男さんにインタビューさせて頂きます。最初に弊社で版画をお作りになって15年ほど経ちますが、以来制作した版画タイトルはなんと128点となりました。

対談する玉村豊男氏(左)とアーティー代表加藤泉

玉村 相当な数だと思っていたけれど、そんなに沢山だったとは驚きました。

アーティー 玉村さんはご病気されて、それをきっかけに絵を描き始めたのでしたね。

玉村 はい。療養中に久しぶりに絵を再開したのです。最初は気持ちが沈んでいたから油絵で暗い絵ばかり描いていました。

アーティー 今とだいぶ画風が違いますね。

玉村 病気が好転してから初めて白い紙にりんごの絵を水彩で描きました。そこからです、植物を描き始めたのは。朝の光の中で花を見ていると、花びらが光を透過しているのがよくわかるのです。とても綺麗で、この光を描きとめるには水彩が一番しっくりときました。

アーティー 病気の回復とともに画風も明るくなってきたわけですね。

玉村 そうです。その後、画廊から個展のオファーを頂き、定期的に個展を開催していくようになりました。個展だから原画を販売します。でもね、うまく描けた絵を売りたくないのです。もう二度とこんな風に描けないだろうと思いますから。でも描く、手放す、それを繰り返すうちに「次の絵はもっとよくなるだろう」と思えるようになってきました。

アーティー 玉村さんは自分の作品や、ご自身の箱根の美術館にも「ライフアート」という言葉を使われていますよね。これは玉村さんのオリジナル造語でしたよね。

玉村 はい。この言葉には三つ願いが込められていましてね、一つ目が命あるものを描く事。二つ目が日常生活の中で描いていく事。三つ目がそれらを生活の中で楽しんでもらう事。それを総括して僕は自分の作品を「ライフアート」という言葉で表現しています。僕には原稿を書いたり、畑仕事をしたりする日常があって、その中から絵を描く時間も作ります。そうやって生まれたアートだからこそ、皆さんにも日常のなかで楽しんでほしいのです。同じ作品でも、毎日見ていると時に新鮮に見えたり、元気づけられたり、暮らしの中で一瞬そういう時間を与えてくれるのがアートの力だと思いますから。

アーティー ライフアートは版画制作にどのように関わってきますか?

ガーデンのテラスからは長野の風景が一望できる

玉村 原画には「作家がその絵に何十時間と取り組んだ」という絶対的価値はあります。
でも原画はひとつだし、その分価格もあげなくてはいけない。日常でアートを楽しんでもらうには版画が目的に合っていました。僕は最初から原画に忠実な版画制作方法を探していたのですが、それにも理由があります。
朝ガーデンに出て、花を見つけます。綺麗だな、こんな形なんだという感動に動かされ夢中で描き始めるけど、当然生きている花だから摘んでしまうとどんどん萎れてきます。それとは対照的に、紙の上の花はどんどんと美しくなっていく。勝手だけど、僕は思うのです。「あぁ、花の命が紙に移ったのだ。命が紙の上で永遠に残るのだ」と。だからこそ版画には忠実性を求めます。版画化する際、ほかの技法も当たったのですが、再現性を求めるとなるとちょっと難しい点がありまして。

アーティー 確かに他の技法…、例えば木版画やリトグラフなどですと、それ自体でしか表せない表現力はあります。しかしそれらに忠実性・再現性を求めるとなると目的が違ってきますからね。
実際ジクレー版画(デジタル版画)をお作りになっていかがでしたか?

玉村 最初の頃はうまく嚙み合わない時もあったけれど、ある時からアーティーさんからの提案で、室内のライトを工房と同じものに合わせたり、僕の癖もだんだんと理解してもらえたりして、最近では2回もやり直して貰うことはなくなりましたよね。最後に色を確認して、これで校了となった時に、僕自身どちらが原画かわからなくなる時があります。この再現性をもってジクレー版画を作れるなら僕にはまさに「最高」という感じですよ。

アーティー それは嬉しいご感想ありがとうございます。9月の松屋銀座での個展は原画や版画ももちろんですが、玉村豊男という人となりを重視した展示と聞きました。本日伺った玉村さんのガーデンや書斎の再現も一部あるとの事で楽しみにしています。

本日はありがとうございました!

(2018年6月 長野ヴィラデストガーデンにて談)