小冊子 「田中一村 -アーカイバル(複製画)-解説書」その②

この度田中一村の新作版画出版に合わせて、
小冊子 「田中一村 -アーカイバル(複製画)-解説書」がNHK出版より発行されました。
監修・解説は大矢鞆音様です。
田中一村が暮らした奄美大島のこと、一村のその生涯にふれ、
版画化された3作品について、ひとつひとつ丁寧な解説がお読みになれる冊子となっております。
版画をご購入の方へお渡しされるとのことです。

また、小冊子後半にて「アーカイバルに込める想い」と称しまして、
弊社代表 加藤の言葉を載せていただきましたので、ご紹介いたします。

アーカイバルに込める想い

アーティーのブランドである「アーカイバル®」は、デジタル版画技法 として一般に知られるジクレーとジャンル的には同じですが、特に保存性 やアート作品づくりとしてのこだわりを強調する意味で独自の名前で展開 しています。美術に特化した材料選定による 100年近い保存性の確保 の他に、作家や版元と一緒になっての版画づくりをアーカイバルという 名前に込めています。

アメリカでは版画を Limited Edition Prints(限定版プリント)と呼 び、日本の版で刷られた絵画」の意味合いでは使っておりません。原 画は1枚しかなく1人の鑑賞物に終わってしまうため、原画を忠実に再現 し多くの人に楽しんでもらおうという自由な発想が根付いています。デジ タル出力はそのような下地もあってアメリカで急速に普及していきました。

デジタルによる版画の価値について質問を受けることがあります。私 はその時次のようにお応えしております。「基本的な技術は家庭に普及 しているインクジェットプリンターと同じです」と。版画製作に対して最も 大事なのは、「製作にかかわる人間のオリジナルを生み出した作家に対 する敬愛の念と、絵画作品への深い理解と感動があること」「作家ある いは監修者、版元、 そして摺師の3者共作で納得のいく作品を作ること」 だと。その結果、認証シールと限定番号が付され、はじめて価値を持 つのだと思っています。

今回は特に監修者(大矢新音氏)と版元(NHK出版)の方々の熱 い想いを、ご依頼当初からひしひしと感じておりました。共に奄美に行き、 作品を生み出した奄美の空気を吸いながら原画と対面。その素晴らしさ に圧倒されながら、様々な場面で「一村」自身による導きを感じながら の共作となりました。

版画工房アーティー 加藤 泉

 

なお、本記事は監修・解説の大矢鞆音様より特別に許可を頂いております。
無断転載は固くお断りいたします。